大阪高等裁判所 昭和57年(ネ)2028号・昭58年(ネ)114号
主文
本件控訴及び附帯控訴を各棄却する。
控訴費用は控訴会社の、附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。
事実
第一申立
一 控訴会社
1 原判決中控訴会社の敗訴部分を取消す。
2 被控訴人の請求(当審における新請求を含む)を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二(附帯控訴費用を含む)審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴会社は被控訴人に対し金六〇〇万円とこれに対する昭和五八年一月二二日から完済まで年五分の割合の金員を支払え(当審における新請求)。
3 控訴費用及び附帯控訴費用は控訴会社の負担とする。
4 2項につき仮執行宣言
第二主張
次のとおり付加、訂正、削除するほか原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決三枚目裏一行目の「あり」から同二行目の「ある」までを「ある」と、同六枚目表末行の「路線に」を「路線を」と、同裏四行目の「対し」を「反対する者に対し」と、同七行目の「路線に」を「路線を」と、同七枚目表六行目の「示したので」を「示したことに」と、同八行目の「塞じ」を「封じ」と、同裏二行目の「路線に」を「路線を」と、同九枚目表一行目の「拡大」を「拡大運動」と、同裏二行目の「会社」を「控訴会社」と、同一二枚目裏一二行目の「労働組合」を「組合」と、同一三枚目裏六行目の「自体のこと」を「の本件転勤」と各訂正し、同一四枚目表五行目の「金額の」を、同裏一一行目の「「当社」から同一二行目の「欄の」までを各削除し、同一六枚目表五行目の「部所」を「部署」と、同一八枚目表六行目の「なり」を「なり(又、昭和四八年二月控訴会社の家庭塗料の広島地区における主要販売店であったPS塗料が倒産し、控訴会社のシェアが他社に奪われつつあったので失地回復を計る必要もあった。)」と、同裏二行目の「一破」を「一般」と、同一九枚目表三行目、四行目、同裏三行目、五行目、八行目、一〇行目、一二行目の「指名活動」を「指名運動」と、同二〇枚目表二行目の「架橋」を「架橋工事」と、同裏七行目の「会社」を「会社を」と、同九行目の「人選」を「段主任の後任者を人選」と、同二一枚目表末行の「指名活動」を「指名運動」と、同二四枚目裏三行目の「陳容」を「陣容」と、同二五枚目表七行目の「前日」を「前記」と、同裏四行目の「いない。」を「ない。」と、同裏末行、同二六枚目表一行目の「営業マンは、」を「営業マンに関する」と、同二九枚目裏末行の「被告」を「控訴会社」と、同三一枚目表九行目の「大阪」を「組合大阪」と、同三二枚目裏一二行目の「合計」を「会計」と、同三三枚目表末行の「大阪」を「組合大阪」と、同四〇枚目裏五行目の「指名活動」を「指名運動」と、同四一枚目表末行、同裏一行目の「ひたすらに」を「ひたすら」と、同四四枚目裏一二行目の「西部」を「西部労使」と、同四五枚目表二行目の「接渉」を「折衝」と、同裏二行目の「接衝」を「折衝」と各訂正する。
2 控訴会社
(一) 本件転勤命令の業務上の必要性について
控訴会社は昭和四八年一月の大阪工場爆発事故により生産能力は激減し、折からの石油ショックによる原材料不足も加わって苦境にたち極めて逼迫した状態にあった。そこで、会社再建策の一として、比較的生産量をあげ、かつ、急激な売上増を期待できる汎用品塗料(外装材)を重点的に販売する方針をたてた。控訴会社名古屋営業所は従来から汎用品の販売実績が劣っていたため、控訴会社の右方針を受け汎用品拡販のため特にヤマイチ商店、松原塗料、名邦塗料三社に対し強力な営業活動を展開していたが、同地区には強力な販売網をもつ鈴鹿塗料があり、同営業所の汎用品の売上げはにわかに増加しなかった。この中にあって、金永主任は名邦塗料のほか松本塗料(汎用品)、尾越塗料(工業品)、日東(二次店)を担当し、中でも名邦塗料の下には有力な建築塗装業者があり、特に汎用品の拡販が期待されるところであった。従って、金永主任の後任は広範囲な営業活動を経験してきた被控訴人をおいて他にいなかったのである。控訴会社は、被控訴人が本件転勤命令を拒否したため止むなく宮本昌敏を金永主任の後任に充てたが、宮本は被控訴人に比べて経験が浅く、同人を含む同営業所員全員の努力にも拘らず、同営業所の昭和四九年度の営業成績は控訴会社全体の平均を下廻る結果となっている。
(二) 被控訴人の後記主張(三)は争う。
3 被控訴人
(一) 昭和四八年当時控訴会社の家庭塗料は全生産高の二ないし三パーセントに止まり売上げは減少傾向にあり、しかも控訴会社は汎用品の重点販売を推進している時期でもあるから、特に広島地区において家庭塗料の販売を強化する理由はなにもなかった(PS塗料倒産の対策は既に講じてあった)。それにも拘らず、控訴会社が広島営業所の段主任を家庭塗料専任の駐在員にしたのは、被控訴人の配転を目指したポスト作りに他ならない。しかも、段主任は従来通り同営業所内にあり、担当が家庭塗料に変わるだけのことであるから、敢えてその後任を必要としない。控訴会社は本四架橋工事の指名運動の下作りを強調するが、それは帰するところ日常の営業活動の一環であってことさら意味を持つものではない。従って、控訴会社が名古屋営業所の金永主任を段主任の後任に充てたのは、被控訴人を名古屋営業所へ配転するための方策にすぎない。
名古屋営業所において汎用品の売上げが極端に少いのは、地元の専門メーカー鈴鹿塗料他三社があるからで、同営業所が汎用品の販売成績をあげることは不可能に近かった。金永主任の担当していた販売店は他に比べ特に有望視されうるものではなかったのである。又、昭和四八年度下期の汎用品売上げ数量が減少したのは名古屋、大阪、神戸、九州の各営業所に共通し、同期から同五〇年上期に至るまで総売上げが減少しているのも各営業所に共通し、これは石油ショック等による供給不足とその後の景気の低落によるもので、一営業所の責任に帰すべきものではない。従って、被控訴人が本件転勤命令に従わなかったために名古屋営業所の営業成績が低下したという事実は全くない。
以上によると、控訴会社が主張する本件転勤命令の業務上の必要性は存しないことが明らかである。
(二) 被控訴人は控訴会社に対し大阪地方裁判所昭和五〇年(ヨ)第三二七四号従業員地位保全等仮処分申請事件を提起し、右申請は認容され、同五二年一一月四日本件訴えを提起した。従って、控訴会社主張の消滅時効は中断した。
(三) 控訴会社は右仮処分決定及び本件原判決に従わず、被控訴人を就労させない。被控訴人の精神的苦痛は甚大である。
よって、被控訴人は控訴会社に対し慰藉料三〇〇万円、弁護士費用三〇〇万円と右合計六〇〇万円に対する昭和五八年一月二二日から完済まで年五分の割合の遅延損害金の支払を求める(当審における新請求)。
第三証拠
原、当審記録中証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所の認定及び判断は次のとおり付加、訂正、削除するほか原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決四八枚目表一〇行目の「配転」を「転勤」と訂正し、同五三枚目裏一二行目の「次に、」を削除し、同行の「関係」を「関係塗料」と訂正し、同五四枚目表一〇行目の「ため」から同一一行目の「あった」までを削除し、同五五枚目表九行目の「指名活動」を「指名運動」と、同裏二、三行目の「その需要者側」を「橋梁メーカー」と、同五六枚目裏末行の「主任」を「主任の後任」と、同五七枚目表三行目の「右」を「後記」と、同五八枚目裏七行目の「内田」を「庄田」と各訂正し、同裏一〇行目の「むしろ」から同五九枚目表一行目の「あるから、」までを削除し、同裏一〇行目の「部所」を「部署」と訂正する。
2 (証拠略)及び当審における被控訴人本人尋問の結果の各一部を総合すると、控訴会社においては元来家庭塗料の生産高は著しく低いうえ、昭和四八年二月頃から汎用品塗料の販売を中心に行う計画のため、家庭塗料は更に減産していたこと、控訴会社の広島営業所において同年上期の家庭塗料の売上げは前年度下期に比べて激減しているが、それは例えば神戸営業所においても同様であって、PS塗料倒産の影響のみによるものとはいえないこと、広島営業所において昭和四八年下期から家庭塗料の売上げは増加しているが、それは価格の高騰によるものであって販売実績の向上によるものではないこと等の事実が認められるが、それ故、控訴会社が被控訴人を広島営業所に転勤させる目的で、わざわざ同営業所の段主任を家庭塗料専任の駐在員に充てたと断じることはできない。又、(証拠略)によると、本四架橋工事に関する控訴会社の指名運動は本社の担当部が現地の広島営業所と緊密な連携を保ちつつ行うもので、同営業所の担う役割は重要であったことが窺知でき、右認定に反する(人証略)及び被控訴人の各供述はたやすく信用できない。そうすると、控訴会社が被控訴人の経歴等を考えて被控訴人を段主任の後任に充てようとしたことは、一面において、あながち不当とは言えない。控訴会社は、被控訴人が右転勤に応じなかったため、名古屋営業所の金永主任を広島営業所に配転させたのであるが、右経過に照らすと、金永主任の右配転をもって、もっぱら被控訴人を名古屋営業所へ転勤させるための方策であったことは認めがたい。
3 原判決説示のとおり、本件転勤命令が控訴会社の業務上の必要性に基づくものであることは肯認されるべきである。しかしながら、(証拠略)及び前記被控訴人本人尋問の結果の各一部、弁論の全趣旨によると、控訴会社は、昭和四八年一月の大阪工場爆発事故後、会社再建の一方策として汎用品塗料の販売を重点的に行う計画をたてたが、右事故並びに石油ショックによる原材料不足等のため供給薄で、拡販は到底期待しえなかったこと、名古屋営業所は、同地区に専門のメーカーがあったため従来から汎用品塗料の販売実績は極端に悪く(例えば、昭和四八年上期において、名古屋営業所一四トン、大阪営業所二八一トン、九州営業所九四トン、神戸営業所一六六トン)、金永主任の担当していた名邦塗料他三社においても汎用品塗料の拡販は不可能に等しかったこと、同営業所の、宮本昌敏が着任した後である昭和四八年下期の汎用品塗料の販売数量は五トンに減少しているが、前記他の各営業所においても昭和四八年下期、同四九年上期と汎用品塗料の販売数量は減少傾向にあること、右は前記供給不足或いは景気の低落によるものであること、同営業所の昭和四八年下期から同五〇年上期に至る全体の営業成績は他の営業所に比べ決して劣っていないこと等が認められるのであって、これらの事実に照らすと、金永主任の後任には被控訴人をおいて他に適切な者がいなかったと認めることはできない(但し、当裁判所は、いわゆるローテーション人事が直ちに不当と考える訳ではない。)。
4 当審における証拠調の結果によっても原判決の認定、説示を覆すことはない。
5 被控訴人の当審における新請求を容認すべき証拠はない。
二 よって控訴会社の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、又、被控訴人の附帯控訴に基づく当審における新請求も理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第五九条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤野岩雄 裁判官 仲江利政 裁判官 蒲原範明)